0.LTVが悪化し、広告費用を捻出できない負のスパイラル
広告運用を弊社が担当させていただいているお客様から、「LTVが上がらないので広告費用の増額が難しい」とのご連絡がありました。
理由を詳しくお聞きすると、広告・LPからの新規顧客獲得単価・CPAは問題ないが、サブスク移行率等が悪化し、売上からの広告分回収に時間がかかっている。そのため、広告費用額のさらなる増額が難しい、ということでした。
確かに、ショップを運用していると、継続購入率が下がりLTVが低下してしまうというケースがあります。収益の将来予測に関わってくるため、事業の前提が壊れてしまうことにつながる自体です。
今回は、過去の購入履歴からユニークユーザーを探し出し、新たなサービス・商品の活用法やターゲット像について定義し、LTV回復を行った事例についてご紹介いたします。
今回は、過去の購入履歴からユニークユーザーを探し出し、新たなサービス・商品の活用法やターゲット像について定義し、LTV回復を行った事例についてご紹介いたします。
1.アーリーアダプターからマジョリティ移行時の顧客キャズムを超える
LTVが下がっている(上がらない)理由としては、初回サンプルからの定期購入への移行率が低いことが直接的な原因です。
確かに、売上・利益の源泉である定期購入への移行率は、ECショップとしての生命線に関わる部分であります。そのため、定期購入率UPに向けた訴求・タッチポイントの増加は直接的な施策としては考えられます。
・ショップリリース当初は、情報感度が高く、購買メリットを丁寧に訴求すれば、自ら調べて購入検討してくれる方々が多かった。
・一方で、当時はメリットを整理するだけでなく、情緒的な訴求から利用を開始する方が多くなっていました。
しかし、より根本的な問題も考えられます。
一方で、当時はメリットを整理するだけでなく、情緒的な訴求から利用を開始する方が多くなっていました。
マーケティング理論としてこの状況を整理すると、「イノベーター理論における、アーリーアダプターの刈り取りが一巡し、マジョリティに移行した」という状況だと推察されます。
したがって、既存顧客の中でも主流であったターゲットに追加して、別の顧客像と配信ストーリーを設計することが必要です。
そして、新たな顧客像の把握・創出に向けて、過去全ての受注データから簡単な統計的処理を施し、ターゲットの深掘り、発信コンテンツへの落とし込みを行うことにしました。
余談ですが、本件においては30,000件以上の受注データの再整理から行ったため、かなりの時間を要することになってしまいました。
こういった顧客データからの統計的処理において、統計的処理が得意なだけでは片手落ちです。売上を作る施策の実行にまで落とし込まないとビジネス的観点では意味がありません。そのため、データ解析者のマーケティングや顧客への理解が求められると考えています。
我々もそういったことにならないように、最終的に発信コンテンツまで落とし込むよう、留意いたしました。
2.具体的な施策
1.顧客の分類
まずは、自社に対して利益をもたらしてくれる顧客とはどのような顧客か定義しました。この際、既存のフレームワークに頼らないことが重要です。受注データや顧客との会話を通じて得られた仮説を元に、切り分けていきます。
本件では、サブスク購入率が減少し、LTVが下がったという課題について、単品で継続購入される方がある程度存在するのではないか、また彼らの売上貢献はある程度高いのではないかという仮説の元、顧客データを整理しました。
その結果、ロイヤルカスタマーと休眠顧客の間に、単品購入者というセール・イベントの際にお得なものを購入する日和見ユーザーがいることが判明しました。
2.商品x商品の購入相関分析
では、そんな単品ユーザーがどんな購買行動をしているのかについてより解像度を上げるために、商品x商品の購入相関分析を行いました。
もっとシンプルにいうと、Aという商品を買った人は他にどのような商品を買っているのか(B or C?)について把握することで、顧客の用途や利用イメージについての検討に繋げる狙いです。
3.ターゲットの深掘り
商品x商品の購入相関分析から、相関性の高い商品の購入について列挙していき、同様の購入動機によるものを整理していきます。
今回のケースでは、大きく分けて3パターンの購入動機があることがわかりました。そのため、その3パターンに分けて移行の作業で、発信コンテンツを企画し、落とし込んでいきます。
余談ですが、現状のマーケティングフローで購入された方の負の相関も見ることができたので、伝えられていたと思っていた顧客メリットが伝わっておらず、購入につながっていないという状態も確認されました。
データの状態で確認しても、顧客の反応は正直です。
4.インフルエンサー施策の活用による初期認知獲得
Metaの広告ターゲティングの大部分は、AIによる最適化が強く働きます。ただ、未認知顧客に広告でリーチする場合に、見込み顧客可動化の判定をAIが行うとっかかりがなければ、広くマスに訴求をしてしまい、口座開設の垂れ流しとなってしまうでしょう。
できれば初期リーチが取れるインフルエンサー施策等で、ターゲットに色をつけておいて、主要配信先をAIが判定する際に最適化しやすいようにする方が良いでしょう。
結果:クリスマス商戦の追い風もあり月次売上160%に
クリスマス商戦と重なったことも要因の一つだが、結果として売上が通常月と比較し60%増加しました。また、休眠顧客の掘り起こしに伴いLTVも約10%改善しました。
単月売上のみへの波及効果だけでなく、Webマーケティング全体での顧客解像度が上がった結果、顧客とのタッチポイントやクリエイティブの精度も上がった、とお客様からはお聞きしました。
総括:仮説から顧客導線を整理し、ストーリーに落とし込むべき
EC運営をされているみなさまは、一般的な集計である商品別売上高・販売数のデータを見られていることが多いと思います。
しかし、顧客の購入パターンについて、相関や時系列でもって整理して、顧客インサイトを発見するという試みは実施されていないかもしれません。いわゆるECでのロイヤルカスタマーまでのゴールデンルート発掘のために、データ整理をまとめて実施するタイミングは必要です。
また、捉えた顧客導線やターゲット像をそのまま訴求してもなかなか顧客には伝わらなかったり、メーカー本意の情報で動いてくれなかったりするものです。
顧客が動きやすい/動いてもいいと思えるストーリーに落とし込むことが、ECの顧客情報データの整理から打ち手に落とし込み成果を上げる上では重要です。